カニの甘味とバターの香り

男性

初めて焼いたカニを食べたのは、中学生のときです。

北国のビルの最上階にあったカニ料理専門の外食チェーン店ででのことでした。

 

お正月などに、茹でたカニを食べたことはあっても
バターで香ばしく焼いた殻付きの脚が、黒い熱々の鉄板にステーキのように盛られているのは
そのビジュアルだけで、食欲が人生真っ盛りの当時のわたしの心を鷲掴みにしたものです。

 

バターが溶けてぴかぴかに光る脚を紙ナフキンで滑らないようにして手でおさえながら、
もう一方の手はカニフォークをしっかりと握って、殻からたくさん外して取り出せるように構えました。
バターが良い香りをさせながらカニの繊維一本一本に染みわたり、その繊維のはしっこは少し焦げて、カニの身の甘いいい匂いをただよわせがら、きれいに殻の中におさまっています。

 

カニの身をきれいに残しながら殻を削ぐのはどうやるのかさっぱりわからないな?とか考えながら、カニの身と殻との隙間にカニフォークを差し込みました。
ホロリぷるぷると外れるカニ!カニの身!最高!
少し残って殻にくっついたままのカニ!カニの身!次こそは!

 

などと心の中では色んなことを考えていますが、次にフォークを差し込む場所を考えながら、
口の中で甘さたっぷりのカニの身を味わい続けるのを止められず、当然のごとく無言で食べすすめ、食べ終わるまでに話た言葉は「おいしいねぇ」という一つの単語だけでした。

 

このお店でバター焼きのカニを食べた次の年からは、お正月に茹でカニのほかバター焼きのカニも食べるようになりました。